「幸福の画家」として親しまれているピエール・オーギュスト・ルノワールは生涯で4,500点以上の作品を残したと言われています。
印象派画家の1人として知られていますが、生涯を通して印象派画家であったわけではありません。
印象派から新古典主義の時代を経て、晩年にはルノワール独自の画風を確立しました。
ルノワールは、モネと並んで日本で人気の高い印象派画家の1人です。
柔らかで優しい画風のルノワールの絵は観ているだけであたたかい気持ちになれる作品が多く、わたしも彼の大ファン!
今回は、生涯にわたって精力的に描き続けた「光と色彩の画家」ルノワールゆかりの地をご紹介していきます。
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このページの目次
ピエール・オーギュスト・ルノワール(Pierre Auguste Renoir)とは?
ピエールオーギュストルノワール(Pierre-Auguste Renoir) | |
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出没年 | 1841年2月25日-1919年12月3日 78歳で肺充血により死去 |
様式・流派 | 印象派 |
出身 | フランス(リモージュ) |
代表作 | 《ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレットの舞踏会》オルセー美術館 《田舎のダンス》《都会のダンス》オルセー美術館 《ピアノを弾く少女たち》オルセー美術館 |
影響を受けた人物 | 18世紀ロココ絵画、ドラクロワ、モネ、アングル |
影響を与えた人物 | エコール・ド・パリの画家、梅原龍三郎、ピカソ |
幼少期から学生時代
印象派を代表する画家として、日本でも人気の高いルノワールは、1841年にフランス中部の磁器の産地として名高いLimogesで貧しい仕立屋の息子として生まれました。
3歳のときに、一家でパリに移り住みます。
幼少の頃から美声の持ち主であったルノワールは、作曲家のCharles Gounod率いるサン・トゥスタッシュ教会の聖歌隊に入り、声楽を学びました。
しかし磁器の絵付職人になるため、聖歌隊を辞め、磁器の絵付師のもとに弟子入り。
1861年にCharles Gleyreのアトリエに入門し、ここでモネやシスレー、バジールなど、のちの印象派と呼ばれる画家たちと知り合います。
翌年にはエコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)にも入学し、絵画を学びました。
芸術キャリア
1874年にルノワールは、モネやドガ、ピサロらと「第1回印象派展」と呼ばれるグループ展を開催。
そして1877年の「第3回印象派展」では、ルノワールの大作《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会 Bal du moulin de la Galette)》を出品し、そこで高い評価を得ます。
1880年以降、ルノワールはアルジェリアをはじめ、世界各国へと旅に出ました。
なかでも1881年に訪れたイタリアでは、フランスロマン主義の巨匠ドラクロワの作品、アルジェリアの女性を描いた絵画やルネッサンスを代表するイタリアの画家Raffaello Santiのフレスコ画に深い感銘を受けます。
ルノワールの画風は、印象派から新古典主義へと変化していくのです。
1900年のパリ万国博覧会では、ルノワールの作品11点が展示されました。同年にレジオンドヌール勲章5等勲章を受章しています。
晩年
晩年、ルノワールは、南フランスのカーニュ・シュル・メールに移り住みます。
重いリウマチ性関節炎を患い、車椅子での生活を余儀なくされました。
指の関節が変形して腫れあがり自分で筆をとることもできない状態でしたが、家族や使用人に腫れあがった指の間に筆を挟んでもらい、絵を描き続けました。
1919年、ルノワールは、カーニュ・シュル・メールの自宅にて79年の生涯を閉じました。
ルノワールゆかりの地巡りのベストシーズン
フランスのベストシーズンは1年中と言っても過言ではありません。
どの季節も素晴らしいのですが、郊外エソワやカーニュ・シュル・メールもめぐるのであれば気候の良い春から秋にかけてがおすすめです。
4月~10月までは営業時間が延びる施設が多く、多くのスポットを観光することができますよ!
美術館だけがお目当てであれば、あえて、オフシーズンでリーズナブルな冬の期間も良いと思います。
ルノワールゆかりの地5選
①エソワ(Essoyes)
シャンパーニュ地方の小さな村「エソワ」は、ルノワールの妻Aline Charigotの生誕の地です。
晩年、ルノワールは家族と南フランスのカーニュ・シュル・メールに移り住みましたが、夏になると、ルノワールは家族とエソワにやって来きました。
現在もエソワにはルノワールの家が残っており、庭の一角にあるアトリエを見学することができます。
またエソワの墓地には、ルノワールと妻アリーヌが眠っています。
ルノワールの家(アトリエ) | |
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住所 | 9 Place de la Mairie, 10360 Essoyes 地図 |
行き方 | パリ東駅(Gare de l’Est)からTERで1時間半のGare de Troyesで下車。そこからタクシーに1時間乗車。 |
時間 | 公式サイトを参照 |
料金 | 12ユーロ 18歳未満無料 |
HP | https://renoir-essoyes.fr/ |
※最新情報は公式サイトでご確認ください。
②モンマルトル(Montmartre)
Musée de Montmartre, CC BY-SA 3.0
「芸術の街」と呼ばれるモンマルトル界隈にあるモンマルトル美術館(Musée de Montmartre)は、かつてルノワールがアトリエを構えた邸宅です。
《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》や《ぶらんこ La balançoire》などの作品がここで描かれました。
美術館には3つの庭があり、その1つは「ルノワールの庭」と名付けられ、庭の片隅には絵画に基づいて設置されたブランコがあります。
ムーラン・ド・ラ・ギャレットは、モンマルトルの丘にあったダンスホールで、当時若者の社交の場所でした。
画中に登場する人物は、ルノワールの友人たちがモデルになっています。
この作品は、1877年に開催された「第3回印象派展」に出品され、ルノワールの印象派作品の代表作となりました。
モンマルトル美術館は、現在モンマルトルの文化史を紹介する美術館になっており、モンマルトルの画家たちの絵画やポスター、デッサンなどが展示されています。
またユトリロの母で、画家でもあったSuzanne ValadonとMaurice Utrilloのアトリエも再現されています。
モンマルトル美術館 | |
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住所 | 12 Rue Cortot, 75018 Paris 地図 |
最寄り | メトロ12号線Lamarck-Caulaincourt駅 メトロ2号線Anvers駅 |
時間 | 11:00-18:00(水-日) |
定休 | 毎週月・火曜日 |
料金 | 15ユーロ |
HP | https://museedemontmartre.fr/ |
※最新情報は公式サイトでご確認ください。
③カーニュ・シュル・メール(Cagnes-sur-Mer)ルノワール美術館
美しい中世の街並が広がるコートダジュール地方のカーニュ・シュル・メールは、ルノワールが晩年を過ごした場所として知られています。
リウマチ性関節炎を病んでいたルノワールは、1907年に暖かな土地を求めて南フランスにやってきました。
旧市街から少し離れた「コレット」と呼ばれる丘に自宅兼アトリエを構えます。
丘からは鷲の巣村「Haut-de-Cagnes」が望め、庭にはオリーブの木が生い茂り、そこで妻アリーヌと3人の息子たちと過ごしました。
車椅子生活を余儀なくされるも、痛みに耐えながら最後まで精力的に作品の制作に励んだルノワール。
ルノワールの死後、この家は3番目の息子クロードが所有していましたが、カーニュ・シュル・メール市に売却し、現在はルノワール美術館(Musée Renoir)として一般公開されています。
ルノワール美術館 | |
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住所 | Musée Renoir, 19 Chemin des Collettes, 06800 Cagnes-sur-Mer 地図 |
行き方 | パリのリヨン駅(Gare de Lyon)からTGVでカンヌ駅(Gare de Cannes)へ。そこからTERに乗り継いでCagnes-sur-Merで下車。徒歩20分。 |
時間 | 10:00-13:00 / 14:00-18:00(6月-9月) 10:00-12:00 / 14:00-17:00(10月-3月) 10:00-12:00 / 14:00-18:00(4月, 5月) |
定休 | 毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日 |
料金 | 6ユーロ 26歳未満無料 |
HP | http://www.cagnes-tourisme.com/fr/decouvrir/musee-renoir/presentation.html |
※最新情報は公式サイトでご確認ください。
④オルセー美術館(Musée d’Orsay)
印象派絵画の殿堂ともいえる「オルセー美術館」は、かつての美しい駅舎を改装して生まれた美術館。
1848年から1914年のフランスおよびヨーロッパ、アメリカの美術作品を所蔵しています。
印象派の作品が集まるフロアの中でも一際目を引くのが、ルノワールの最高傑作《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会 Bal du moulin de la Galette》。
吉岡徳仁の名作ベンチ《Water block》に腰掛け《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》を見ながら贅沢な時間を過ごしていると時間が経つのも忘れてしまいます。
木漏れ日の落ちるルノワール独特の表現を見ていると心が躍りだすよう。
この作品は、1877年に開かれた「第3回印象派展」に出品されました。
画家で絵画収集家であったGustave Caillebotteが購入し、彼の死後オルセー美術館に寄贈されました。
展示場所:上階・5階(Niveau 5)
またルノワールの代表作《ピアノを弾く少女たち Jeunes filles au piano》は、政府からリュクサンブール美術館のための作品制作を依頼されたもので、ルノワールは同じ題材の絵を少なくとも6枚描いたといわれています。
そのうち国家が買い上げた作品は、現在オルセー美術館で見ることができます。
こんな言葉がのこっているの、聞いたことがありますか?
「人生には不愉快な事柄が多い。だからこれ以上、不愉快なものを作る必要はない。」
オルセー美術館 | |
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住所 | 1 Rue de la Légion d’Honneur, 75007 Paris 地図 |
最寄り | メトロ12号線Solférino駅 |
時間 | 9:30-18:00(火水金土) 9:30-21:45(木) ※閉館時間の45分前まで入場可能 |
定休 | 毎週月曜日、5月1日、12月25日 |
料金 | 16ユーロ 18歳以下無料 ミュージアムパスOK |
HP | https://www.musee-orsay.fr/ |
チケット | オルセー美術館チケット |
※最新情報は公式サイトでご確認ください。
⑤オランジュリー美術館(Musée de l’Orangerie)
モネの大作《睡蓮 Les Nymphéas》で知られる「オランジュリー美術館」は、ルノワールをはじめ、ピカソ、マティス、モディリアーニなど、ヨーロッパ屈指の絵画コレクションを誇ります。
もともとオランジュリー美術館の建物は、19世紀中頃にチュイルリー宮の庭園に建てられたオレンジ温室を改装したもので、モネの連作《睡蓮》が自然光の中で鑑賞できるよう工夫されています。
ルノワールの代表作《ピアノを弾く少女たち》は、オランジュリー美術館にもあり、同じ題材の絵は少なくとも6作品あるといわれています。
現在、オランジュリー美術館にある作品は、晩年までルノワールのアトリエに保管されていたもので、ルノワールの死後、1928年にポール・ギヨームが収集しました。
またこの作品のモデルとなった二人の少女は、オランジュリー美術館に展示されている《二人の少女の肖像 Portrait de deux fillettes》のモデルにもなっています。
ほかにもルノワールの3男クロードをモデルにした《ピエロ姿のクロード・ルノワール Claude Renoir en clown》や《ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル(Yvonne et Christine Lerolle au piano》、《長い髪の浴女 Baigneuse aux cheveux longs》、《風景の中の裸婦 Femme nue dans un paysage》などルノワールの珠玉のコレクションが揃います。
オルセー美術館同様、ルノワールのファン必見の美術館となっています!
オランジュリー美術館 | |
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住所 | Jardin Tuileries, 75001 Paris 地図 |
最寄り | メトロ1, 8, 12号線Concorde駅 |
時間 | 9:00-18:00 |
定休 | 毎週火曜日、5月1日、7月14日の午前、12月25日 |
料金 | 12.5ユーロ 18歳未満無料 ミュージアムパスOK |
HP | https://www.musee-orangerie.fr/ |
※最新情報は公式サイトでご確認ください。
ルノワールゆかりの地まとめ
「見る人を楽しい気持ちにさせる絵」を描き続けたオーギュスト・ルノワール。
彼の人生は、決して順風満帆とはいえませんでしたが、ルノワールがキャンバスに込めた願いは、「幸福」でした。
こうして幸福感あふれる作品を数多く残したルノワールは、いつしか「幸福の画家」と呼ばれるようになり、今も世界中の人々を魅了し続けています。
この記事を参考に、ルノワールとモネ、ゴッホなど、同じ時代を生きた画家たちの生涯を巡る旅へ出かけてみませんか?
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