フランス北部のノルマンディー地方は、「印象派発祥の地」として知られています。
なかでも小さな港街オンフルールは、水面に映る情景がとても美しく、19世紀の芸術家たちに愛されました。
Camille Corotによって「空の王者」とよばれたウジェーヌ・ブーダンは、屋外で制作活動を始めた印象派の先駆的風景画家でした。
Claude Monetの師として知られ、モネに戸外制作を教えたのもブーダンでした。
今回は、明瞭な外光表現を探求し、海景や浜辺の情景を多く描いたウジェーヌ・ブーダンゆかりの地をご紹介していきます。
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このページの目次
ウジェーヌ・ブーダン(Eugène Boudin)とは?
ウジェーヌブーダン(Eugène Boudin) | |
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出没年 | 1824年7月12日-1898年8月8日 74歳で死去 |
様式・流派 | 印象派、空の画家 |
出身 | フランス(オンフルール) |
代表作 | 《トゥルーヴィルの海岸》オルセー美術館 《トゥルーヴィルの浜辺》オルセー美術館 《トゥルーヴィルの浜辺風景》ワシントン・ナショナル・ギャラリー |
影響を与えた人物 | クロードモネ |
幼少期
1824年7月12日、ウジェーヌ・ブーダンは、フランス北西部ノルマンディー地方の港街オンフルールの水夫の家庭に誕生。
幼い頃から船乗りであった父の船に乗り、海の魅力を知ります。
1835年、一家はル・アーヴルに転居。
父親は水夫をやめて、新天地で文房具兼絵画店を開業し、成功をおさめます。
ブーダンは店を手伝い、次第に絵画に興味を持ちはじめます。
店ではバルビゾン派の画家Jean-François MilletやConstant Troyonなどの絵画を取り扱っていたため、ブーダンは先代風景画家との交流が生まれ、絵画の教えを受け、画家になることを目指すようになります。
芸術キャリア
1851年、ル・アーヴルから奨学金を受け、ブーダンは絵画を学ぶためパリに向かいます。
ロマン派の画家Eugène Isabeyのアトリエで絵を学び、ルーブル美術館でオランダ絵画の研究や模写に励みました。
しかしパリの暮らしにあまり馴染めず、3年後に帰郷。
1858年、Claude Monetと出会い、共に戸外で制作活動を行います。
1859年、写実主義の巨匠Gustave Courbetや詩人であり、美術評論家であったCharles Baudelaireと出会います。
これがきっかけでブーダンの才能が開花。
ブーダンの描くパステル画の空は、ボードレールによって「気象学的な美しさ」と評されました。
1860年、パリにアトリエを移し、Camille CorotやCharles-François Daubigny、Johan Barthold Jongkindなどの画家たちと交流し、サロンへの出品開始。
1874年、第1回印象派展に出品。
1870年代、ブーダンはベルギー・オランダ・南フランスを旅し、1892年から1895年にかけて定期的にヴェネツィアを訪れています。
晩年
パリのサロンに出展を続けていたブーダンは、1881年に第3位、1889年に金賞を獲得。
1892年、レジオン・ドヌール勲章を受け、ナイトの称号を得ました。
1898年8月8日、ウジェーヌ・ブーダンはドーヴィルにて74年の生涯に幕を閉じました。
ブーダンの遺骸は、モンマルトルのサン・ヴァンサン墓地(Cimetiere de St-Vincent)に埋葬されています。
この墓地には、近代フランス画家のMaurice Utrilloも眠っています。
ウジェーヌ・ブーダンゆかりの地4選
①ウジェーヌ・ブーダン美術館(Musée Eugène Boudin)
フランス北西部に位置するノルマンディー地方の港街オンフルールは、ウジェーヌ・ブーダンの生まれ故郷。
ちなみにジムノペティで有名な作曲家のÉrik Satieもオンフルール出身です。
旧港には色とりどりの建物が並び、水面に映し出される情景が美しく、訪れた人々を魅了します。
オンフルールにあるウジェーヌ・ブーダン美術館は、ブーダンとその友人Alexandre Dubourgの発案により、1868年に創設されました。
この美術館にブーダンは、自分の作品53点と画家仲間が制作した17作品を遺贈しています。
ウジェーヌ・ブーダン美術館 | |
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住所 | Rue de l’Homme de Bois, 14600 Honfleur 地図 |
行き方 | パリのSaint-Lazare駅からフランス国鉄SNCFでTrouville-Deauville駅まで約2時間。駅からオンフルール行きのバス(n° 20 または n°50)に乗り換え。所要時間約1時間。 |
時間 | ※時期によって変動が激しいので公式サイト参照 |
定休 | 火曜日、5月1日、7月14日、12月25日 |
料金 | 8ユーロ(常設展6ユーロ) 16歳以下無料 |
HP | http://www.musees-honfleur.fr/musee-eugene-boudin/historique.html |
※最新情報は公式サイトでご確認ください。
②ドーヴィル(Deauville)とトゥルーヴィル(Trouville)
もともとノルマンディー地方の漁村だったドーヴィルは、19世紀に皇帝ナポレオン3世の時代に高級リゾート地として整備されました。
パリのブルジョワ階級が休暇を過ごすことで有名で、ノルマンディー様式の高級別荘ヴィラをはじめ、競馬場、カジノ、高級ブティックなどが立ち並びます。
一方、川を挟んで隣り合う街トゥルーヴィルは、とても庶民的な雰囲気です。
「海景の画家」と称されたウジェーヌ・ブーダンは、《ドーヴィルの海水浴》、《トゥルーヴィルの浜辺》、《トゥルーヴィルの海岸》、《トゥルーヴィルの眺め》、《トゥルーヴィルの海岸での会話》など、ドーヴィルとトゥルーヴィルでたくさんの浜辺の風景を描きました。
1898年、ブーダンはやがて訪れる死を予期し、「海を見ながら死にたい」とパリからドーヴィルの邸宅へ行き、そこで息を引き取りました。
ドーヴィルの邸宅 | |
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住所 | – |
行き方 | パリのSaint-Lazare駅からフランス国鉄SNCFでTrouville-Deauville駅まで約2時間。 |
時間 | – |
定休 | – |
料金 | – |
HP | https://www.normandie-tourisme.fr/beaux-detours/trouville-deauville-et-la-cote-fleurie/(観光局) |
※最新情報は公式サイトでご確認ください。
③アンドレ・マルロー近代美術館(Musée d’Art Moderne André Malraux : MuMa)
ノルマンディー地方のLe Havreは第二次世界大戦中に爆撃を受け、壊滅的な被害を受けた街です。
鉄筋コンクリート造建築のパイオニアだった建築家Auguste Perretによって再建され、ユネスコの世界遺産に登録されています。
ル・アーヴルは印象派ゆかりの地で、印象派の画家クロード・モネが《印象、日の出》を描いた場所としても知られています。
アンドレ・マルロー近代美術館は、1961年に作家で政治家であったAndré Malrauxによって創設されました。
もともとフランス有数の印象派コレクションを所蔵する美術館として知られていましたが、2004年に200点以上のプライベート・コレクションが寄贈され、オルセー美術館に次いでフランスで2番目に多い印象派コレクションを所蔵する美術館となりました。
ウジェーヌ・ブーダンもまたル・アーヴルを愛した画家の1人で、《ル・アーヴルの港》などの風景画を描いています。
アンドレ・マルロー近代美術館に収蔵されているウジェーヌ・ブーダンのコレクションは、1900年にブーダン家から寄贈され、世界有数の規模を誇ります。
アンドレ・マルロー美術館 | |
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住所 | 2 boulevard Clemenceau, 76600 Le Havre 地図 |
行き方 | ル・アーヴル駅からアンドレ・マルロー美術館まで徒歩約30分 |
時間 | 11:00-18:00(火-金曜日) 11:00-19:00(土・日曜日) |
定休 | 月曜日、1月1日、5月1日、11月1日、11月11日、12月25日 |
料金 | 10ユーロ 26歳以下無料 |
HP | http://www.muma-lehavre.fr/fr |
※最新情報は公式サイトでご確認ください。
④オルセー美術館(Musée d’Orsay)
パリ三大美術館の1つであるオルセー美術館は、1848年から1914年までの多様な作品を展示し、なかでも世界最大の印象派コレクションを誇る美術館として知られています。
数々の名画を所蔵するオルセー美術館には、ウジェーヌ・ブーダンの作品《トゥルーヴィルの海岸》や《トゥルーヴィルの浜辺》、《ボルドー港》などの名作が揃います。
オルセー美術館 | |
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住所 | 1 Rue de la Légion d’Honneur, 75007 Paris 地図 |
最寄り | メトロ12号線Solférino駅 |
時間 | 9:30-18:00(火水金土) 9:30-21:45(木) ※閉館時間の45分前まで入場可能 |
定休 | 毎週月曜日、5月1日、12月25日 |
料金 | 16ユーロ 18歳以下無料 ミュージアムパスOK |
HP | https://www.musee-orsay.fr/ |
チケット | オルセー美術館チケット |
※最新情報は公式サイトでご確認ください。
ウジェーヌ・ブーダンゆかりの地まとめ
外光派の1人としてクロード・モネをはじめ、印象派画家たちに大きな影響を与えたウジェーヌ・ブーダンは、キャンパスを戸外に持ち出し、ノルマンディー沿岸を中心に、インスピレーションの源となった海や空の風景画を数多く描きました。
ブーダンの鋭い観察眼でとらえた風景画は、見る者の心を魅了します。
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